法人向け翻訳会社で約28年間、新規営業を担ってきたOさん。業界を取り巻く環境の変化を機に、これまでの経験をいったん手放し、未経験の配送ドライバーへ転職しました。結果主義の個人プレーの働き方から、安全とチームワークを重視する仕事へ。新たな環境で感じた戸惑いや学び、今も変わらない仕事への姿勢を伺いました。
長年勤めた会社を離れ、経験をリセットする転職を
Oさんは、前職では法人向けの翻訳会社で営業をされていたそうですね。具体的には、どのようなお仕事をしていたのでしょうか。
約28年ほど営業として勤めており、主に新規開拓が中心でした。主に扱っていたのは、工作機械や自動車などの操作マニュアル、安全に関するマニュアルなどです。翻訳そのものは制作スタッフが担当し、私は仕事を受注して制作へつなぐ役割を担っていました。
案件は複数社によるコンペや見積もり合わせになることが多く、受注には大きな達成感がありましたね。自分が受注したときはもちろん、アドバイスした後輩が受注できたときもうれしかったですね。顧客の状況を考えながら作戦を立て、情報を集めて提案するところに面白さを感じていました。

長く働いてきた会社を離れる決断には迷いもあったと思います。転職を決めた背景には、どのような変化があったのでしょうか。
転職を考えた大きな理由は、翻訳業界を取り巻く環境の変化です。AIの普及によって、翻訳の仕事は以前より少なくなっていました。できればその会社で働き続けたかったので、辞めるまでにはとても迷いましたね。
「一番感動した接客は?」面接の質問から学ぶ、接遇の大切さ
転職活動では、業界や仕事内容についてどのような条件で仕事を探していましたか。
長く続けてきた営業経験を生かすというより、一度リセットして、新しい仕事に取り組んでもよいのでは、という気持ちが最初にありました。
その上で、人手を必要とする業界であれば、自分の年齢でも受け入れていただけるのではないかと考え、運送業界に目を向けました。大型車を運転するには新たな免許が必要になるため、まずは今持っている免許で始められる仕事を探しました。
配送の仕事に対して、入社前はどのようなイメージを持っていましたか。
入社前は、配送の仕事は一日中走り回るような忙しいイメージを持っていました。長く働ける仕事なのかという心配もあったものの、求人には労働時間やルールをきちんと守っていることが書かれていたので、その点には安心感がありましたね。
他社の求人も見ましたが、最終的にはイオンネクストデリバリーが一番良いと感じ、入社を決めました。
面接で特に印象に残っている質問はありますか。
「一番感動した接客は?」と聞かれたことです。とても深い質問だと感じました。そういえば、私がよく行くテイクアウト店では、商品を渡すときに「おいしくお召し上がりください」と声をかけてくださるな、と後から思い出しました。お客さまの印象に残る一言や気遣いを、自分も見つけていきたいと思いました。

「安全が一番」。結果主義の前職との違いを感じた研修
研修では、どのようなことから学び始めましたか?
最初に接遇を学びました。お客さまにどのような言葉を使うのか、どのような流れで商品をお渡しするのかといった基本から教わり、その後、商品の扱いや積み込みの順序、運転について学びました。
研修で特に印象に残っているのは、「安全が一番」と繰り返し言われたことです。運転だけではなく、商品の扱い方についても、安全に作業する方法を長い時間をかけて教わりました。前職では結果を出すことを強く求められていたので、何よりも安全を優先する考え方は大きな違いでした。
入社後、どのような業務を担当していきましたか。
入社後は、まずドライバーとして仕事を始めました。ところが、少しミスが続いてしまったので、途中でいったん配送を離れ、商品の管理やトラックへの積み込みなどを行う業務をしばらく担当しました。その仕事を通して、商品がどのような流れで配送されるのかを理解できるようになり、日々の作業を正確に、一定のペースで進めることも身についたと思います。その後、ドライバー業務に再び戻りました。

ドライバー業務に戻る際には、どのようなきっかけがあったのでしょうか?
以前の営業所で一緒に働いていたリーダーの方々から「もう一回、ドライバーとして仕事をしてみようよ」と声をかけていただけたんです。自分のことを気にかけ、復帰を喜んでくださる方がいるなら、もう一度頑張りたいと思い、希望を伝えて戻らせていただきました。ミスをしてしまってもチャンスをいただけることや、応援してくださる仲間がいることは、本当にありがたいことだなと改めて噛み締めた出来事でした。
未経験の仕事に取り組む中で、自分の仕事の癖に気づいたことはありますか。
個人プレーの癖がついてしまっていることです。前職の営業は、結果さえ出せば自分のやり方で動ける仕事でした。一方で、配送の仕事では報連相やチームワークがとても大切です。
今までの仕事の仕方では、何かトラブルがあっても「自分の判断でお客さまと話を進めてしまおう」という感覚になってしまいますが、それではよくありません。まずマネージャーに相談し、どのように対応するかを確認してから動く必要があります。長年の癖で、今でも先に体が動きそうになることはありますが、一人で勝手に判断しないよう意識しています。
個人で自律的に判断できる能力は長い経験で培った強みでもある一方で、環境や業務内容によっては習慣を見直すことも大切になりそうですね。
はい。そのため、これまでの経験を生かそうとするよりも、今は一度手放して、新しいものを一から積み上げようと考えています。経験から「これくらいなら大丈夫だろう」と判断したことが、運転では軽率な行動につながることもありえますからね。転職して環境が変わったからこそ、自分の仕事の癖に気づくことができました。
法人営業と配送では、仕事の進め方にどのような違いがありましたか?
法人営業と配送は違う仕事でありながら、お客さまの期待を裏切らず、約束を守るという点は共通していると思います。ただ、配送では時間通りにお届けすることだけでなく、安全を守ることも大切です。そういう意味で、時間への考え方は違うと感じますね。
というのも、以前の仕事では、顧客と約束した時間を守ることがとても重要でした。けれど配送では交通状況や天候によって、どうしても予定どおりに進まないことがあります。最初は時間に遅れることが気になって仕方がありませんでしたが、今はお客さまにもご協力いただきながら、安全を最優先することが大切だと考えています。

個人プレーの癖を手放し、チームで働く意識へ
運転に慣れてきた今も、意識していることを教えてください。
むしろ、運転は、慣れて得意になったと思わないほうがよいと考えています。指導を受ける中では、視野が狭くなりやすいことを何度も指摘されました。自分では周囲を見ているつもりでも、前だけに意識が向いてしまうことがあります。アクセルやブレーキの使い方も含め、本当に一から学び直しました。
わからないことがあったとき、周囲には相談しやすい環境ですか?
はい。わからないことも質問しやすく、その場で答えが分からなければ、後から調べて翌日に教えてくださることもあります。今でも車両や交通ルールについてわからないことがあれば、質問をしています。安心して質問できる環境は、この職場のとても良いところですね。
今後のキャリアについて、どのように考えていますか。
今のところ、何か大きな役職や目標を目指しているわけではありません。まずは毎日、安全に帰ってくること、お客さまに喜んでいただき配送を終えることを繰り返していきたいと考えています。それを一番の目標として、着実に続けていきたいです。
同世代で初めて転職する方や、未経験の仕事に挑戦する方へ、どのような言葉を伝えたいですか。
「まず相手の話を聞いてみてほしい」ですね。私と同年代の方の場合は、自分より年下の方から指摘を受けることもあるはずです。場合によっては、感情的になってしまうこともあるかもしれません。ただ、その場では一度受け止めて持ち帰り、「なぜこう言われたのだろう」と考えてみると、自分のために言ってくれているのだとわかるんです。

前職で法人営業をしていた頃の自分に、今の仕事について伝えるとしたら、どのように話しますか?
「今も相変わらず、地道に仕事をしているよ」と言いたいです。営業でも、電話をかけたり、人に会いに行ったりすることを何度も繰り返してきました。今の配送も、毎日の仕事を一つずつ積み重ねていくことが大切です。仕事は変わりましたが、地道に続ける姿勢は変わっていません。
この会社には、支えてくれる仲間がたくさんいます。皆さんの言葉をよく聞き、自分なりにかみ砕いていくと、良い方向に進んでいけます。良い仲間と一緒に働きたい方に、おすすめしたい仕事ですね。