今回は、人事部のSさん、Fさんにお話をお伺いしました。イオングループのスタートアップ企業である、イオンネクストデリバリー。会社や組織としての特徴、組織として大切にされていること、キャリアアップの事例などについてお話いただきました。
イオンの商品・サービスをお客さまに直接お届けする
まずは、イオンネクストデリバリーとはどんな会社か教えてください。
2023年にスタートした『Green Beans(グリーンビーンズ)』という、イオンの新しいオンラインマーケットがあります。そこでご注文いただいた商品をお客さまのご自宅までお届けするラストワンマイル部門を担うのが当社になります。

イオングループの中では新しい事業となりますが、どのような役割・期待から生まれたのでしょうか。
一つは、都心部での認知・サービス拡大です。イオンはこれまで地方での店舗展開を積極的に行ってきたので、地方では知名度もある程度あり、何か買いたいものがある時は「イオンに行く」と想起していただくことは多いのですが、都心部では「名前は知っているけど実店舗には行ったことがない」という方も一定数いらっしゃるのが現状だと思っております。一方で、都心部ではワンストップでお買い物が完結するところが少なく、食料品と衣料品は別のところに買いにいく必要があることが多いです。都心部に暮らしている方は忙しい方も多いと思いますので、取扱い品目が多くワンストップでお買い物が完結可能なGreen Beansのサービス拡大によって、お客さまの時間捻出に寄与できると考えています。
また、このような食料品に関するオンラインマーケット市場は、海外の方が日本よりも普及しており、例えば韓国では約25%がオンラインマーケットが占めると言われています。今後日本でも需要は伸びていくと考えており、市場を牽引していきたいと思っています。

オンラインマーケットサービスを提供する会社や他の物流会社との違いは何でしょうか?
お客さまがイメージする『イオンでの買い物』をオンライン上で一気通貫でき、かつイオンの従業員が商品をお届けする、ということが他社様との違いであり、強みだと思います。
Green Beansはオンラインマーケットですので、お客さまと直接接点を持てるのは商品をお渡しする時のみになります。そのため、商品をお渡しする数十秒の時間を大事にしており、当社では接客に力を入れております。接客研修を専門的に行なっている部署があり、例えば航空会社の方をお招きし、実際に研修をしていただくこともあります。
このような接客研修を実現できるのは、ドライバーを正社員として雇用しているからです。他社様ですと、業務委託の個人ドライバー様や協力会社様に依頼しているケースが多いので、このような点も差別化できていると思っています。
それはイオングループならではの強みですね。サービス内容の面でも違いはありますでしょうか?
そうですね。配達時間でしょうか。お客さまが朝7時から夜11時までを1時間枠で指定できるようなサービスは、他社様を見てもないので、そのあたりも差別化できているかなと考えています。例えば午前便で指定した場合、午前の何時台に届くのか特定できず、身動きが取りにくくなりがちだと思いますので、Green Beansで配達時間帯をご指定いただき、お客さまには自由な時間を増やしていただきたいと思っています。
また、これはドライバーが働く上での違いにも繋がります。当社の場合は時間帯ごとにお届けできる上限枠数が決まっておりますので、無茶な配達件数を担うことがありません。そのため、疲弊することが無い働き方にも繋がっていると感じております。

人を大切にするイオングループの理念を受け継いでいる
様々な違いがおありなのですね。現在、配達拠点が増えていらっしゃいますが、組織としての共通点や特徴はありますでしょうか?
人の特徴で言いますと、物流業界のイメージとは違い、人当たりのいい方が多いと思います。前職が営業職や接客業だった方が多いので、自然と共通した人柄を持つ方が入社に至ったのかなと思います。他には、『イオン=小売業』のイメージが強いからか、接客に興味を持たれていることが多いです。そのため、接客を楽しもうと思えるイオンのカラーに近いような方にご入社いただいているのかなと思います。
先ほどの特徴は現場寄りだったので、本部の方の特徴も教えていただけませんか?
本部は、中途採用の方もいますが、イオングループから出向の方も多くいます。新規事業に自ら手を挙げてきている方もいるので、チャレンジ精神があり、アクティブなタイプが多いです。どの社員も売り場など現場を経験しているので、現場ファーストの考え方が根付いています。さらに現場が活性化するために、バックオフィスのメンバーも頑張ろう!というスタンスの人が多いですね。当社はスタートアップですので、自分の役割を限定してしまう方や、現場をおざなりにするような方はカルチャーと合わないと思います。

今スタートアップというお話もありましたが、創業期で多くのことに対して意思決定をされていると思います。その際の行動指針や大事にしていることはありますか?
これはイオングループに共通することですが、第一に考えるべきは「お客さま」です。これは絶対に外せません。その次に、従業員にとってどうなのか、意味があるのか、という基準ですね。この二つが大きな軸になっており、大きく括ると「人」のところが指針となって、意思決定をしております。
イオングループは、創業の頃から「教育は最大の福祉である」ということを大事にしています。当社が社員研修を充実させている背景は、この考え方が根幹にあると思います。そして、入社のタイミングで、グループビジョンなどの理念教育を1日掛けて実施しております。これらを通じて「お客さまにとってどうなのか」という考えが皆の行動指針になっていると思います。
現場からもっと教育者を増やしたい
グループの考え方だったのですね。
それから当社としては、現場からもっと教育者を増やしていきたいと考えております。やはり、本部の人間が考えるやり方と、現場目線の取り組みやすさや課題には違いがあると思います。ですので、現場発信でバージョンアップできるような取り組みにしていきたいです。これからも続々と拠点を増やす計画があるため、現場での人材教育の向上に取り組んでいきたいと思っています。

現場から教育者を増やす、というのも「人を大切にする行動指針」と繋がっているように感じます。
社長は現場の声をヒアリングすることをすごく大切にしています。定期的に各拠点へ足を運び、ドライバーとコミュニケーションを取っています。机上の空論にならないように、現場ありきでの改善を大切にしていますね。
現場の方へのインタビューでも「本部の方が自分たちの意見を聞いてくれる」という声がよく上がっていました。何か具体的な取り組みをされているのでしょうか?
そうですね。特に接遇担当の部署は、各拠点を回ってドライバーに同乗したり、ヒアリングを実施しています。そこで、「マニュアルではこうなっているけど、お客さまからこういうご意見をいただきました」という生の声を聞き、マニュアルを随時変更しています。そういう意味でも、どんどん働きやすく、やりやすい方法にバージョンアップはできているかなと思います。
最近あった話ですと、『2度目のインターホンを押すか押さないか問題』がありましたね。荷物を玄関前に置いておいてくださいとおっしゃるお客さまに対して、これまでは玄関前に商品の設置準備ができたら2度目のインターホンを押すようにしていたのですが、不要と言う声が多くありました。これは、お届けする商品が食品中心なので、すぐに受け取っていただきたいという意図で実施されていましたが、お客さまからは不要なご意見も多いことから、どうバージョンアップさせるか?が議論され、1度目のインターホン時にお声かけするような形式に変更されました。やはり、いつでも『お客さまファースト』で考えることが大事だと考えています。

キャリアアップに決まったレールはない
実際、入社後にどんなキャリアを歩んでいけるのか、キャリアアップされている方の事例なども踏まえてお伺いできますでしょうか。
事例で申しますと、1期生で入社した女性ドライバーは、小売出身でドライバーは未経験でしたが、現在は副スポーク長という、現場のドライバー管理・教育を行う役職に昇進しています。拠点の中で昇進していくというパターンもありますし、別の方ですと、安全教育を担当する部署に異動をした実例もあります。現場からサポート部門に異動する例は増えてきていますね。現在は社内での異動が中心ですが、将来的にはグループ会社への出向なども可能性があると思います。他の物流会社様ですと、拠点長になったらその後のキャリアアップが難しい、なんて話を聞いたりしますが、当社は決まったレールがあるわけではないので、本人の希望と適性を見て判断しています。
本人の適性を見て判断、というのを、もう少し具体的に教えていただけますか?
最初は、拠点長からの推薦です。お客さまからのお褒めの言葉であったり、後輩への指導態度などを見ております。あとは、研修に先輩社員として参加してもらう等の段階を踏むようにしています。本社の本部長もかなり現場に足を運ぶので、現場や研修の参加状況を見て、総合的に判断されるような形です。

半年に一度、などタイミングは決まっていますか?
特に決まっていません。そこはまだまだ創業期のスタートアップであるいいところかなと思います。新しいスポークもどんどんできていますし、その度にチャンスがあると思います。
また、拠点内のドライバーからリーダー・トレーナーへの昇進については、2〜3ヶ月のペースで実施しています。こちらも拠点長からの推薦で、リーダー・トレーナーになる為の教育を受け、問題がなければ昇進です。年代や性別は関係なく、かなり多くチャンスがあると思います。
より充実した教育を従業員へ
ありがとうございます。最後に、人事としての今後の展望や取り組みについて教えてください。
まず、業務以外の研修をもっと実施したいと思っています。教養やヒューマンスキルに繋がるような教育を充実させていきたいです。今は業務に直結する研修が中心となっているので、社員のキャリアアップに繋がるような教育の場を全員に提供していきたいと考えております。
それによって、よりよい職場環境の実現につながると思います。先ほど「お客さま第一」というお話をしましたが、一緒に働く仲間への気遣いや思いやりも欠かせないと思っています。多様な教育を通じて一人一人の意識を向上させることで、より働きやすい職場を作っていきたいです。
また、拠点を超えたコミュニケーションを生むような施策も実施していきたいですね。当社のいいところとして、同期入社が多いということが一つあると思っています。入社時に一緒に研修を行うので、年代を超えた繋がりができて、各拠点に配属されてからも交流があるという話はよく聞くのですが、それを活性化させるような取り組みはまだまだできていません。拠点内の風通しの良さや仲の良さもいいところとしてあるのですが、もっと横のつながりも作っていきたいと思います。
