イオングループの新たなネット専用スーパーとして2023年7月にサービスを開始したGreen Beans。サービスの配達業務を担っているイオンネクストデリバリーは、ドライバー(イオンネクストデリバリーではクルーと呼ぶ)の丁寧な配達による高いサービス品質を維持して、現代の新たな配達システムの創造へ挑戦しています。
挑戦を続ける理由は一体どこにあるのか。デジタル技術の活用・サービスの品質・組織についてという3つの観点から、経営企画部長のFさんにお話を伺います。今回はサービス品質について語っていただきました。
目次
買いたい瞬間を逃がさない。 商品を欲しいタイミングで提案できるのがサービス
の強み
前回に引き続きよろしくお願いします。競合他社と比較した際、Green Beansの優位性は何になるのでしょうか?
デジタル技術編でお話したことの他に挙げるとすれば、AIが購買履歴からお客さまの買い物動向を学習していることだと思います。
一般的なECサイトでは、商品を買い物カゴに入れた時点でその商品に関連する商品を表示するのですが、Green Beansでは過去の購買履歴からお客さまそれぞれの買い物内容や頻度を学習しているので、いつでもレコメンド機能を使うとそれぞれのお客さまにあった商品の提案ができるんです。
お客さまからすると「自分がちょうど欲しいと思っていたタイミング」でレコメンドされるので、手間をかけずスムーズに買い物ができる感覚を持ちますよね。
他に当社独自のシステムとして、サイト上で献立を提案するレシピ機能というものがあります。サイト上におススメされているレシピのボタンを押すと、料理に必要な食材が自動で買い物カゴに追加される仕組みです。1クリックで食べたいと思ったレシピの買い物ができるんです。また、自宅にある食材など買う必要がない商品は後から削除できるので、重複で購入してしまうケースを防ぐことが可能になりました。
毎日メニューを考える悩みや煩わしさを減らして、より少ない操作で心地よく、効率的な買い物を実現する。私たちが重視している「お客さま第一」の考え方をベースに、競合他社と差別化できている特徴的な機能だと感じます。

お客さまにとって心地いいサービスを届けることが最も重要。社員教育で接客に
注力する背景
お話からお客さま第一の姿勢が伝わってきます。ところで、イオンネクストデリバリーはなぜ配達時の接客に注力しているのでしょうか?
ネット専用スーパーを立ち上げるときに、いちばん課題とされたのが「お客さまとの接点が減ることで、顧客の声が聞こえなくなってしまうこと」でした。その課題を解決するためにも、貴重な顧客接点であるお届け時の接客に力を入れようとなったのが始まりです。
コロナ禍を経て置き配であったり、非対面・非接触でのお受け取りを希望されるお客さまも増えましたよね。配達の形が多様化したことは利便性が上がった一方で、鮮度管理の面では懸念もあります。
Green Beansはお客さまがご在宅であることを確認したうえで、玄関先にお届けする非対面配達に対応しています。必ずインターホン越しにお声かけをして配達することで、お客さまとの接点は変わらず持ち続けているんです。


あとは競合のネットスーパーと比較したときに、私たちが掲げるお客さま第一の接客力を磨いてサービスを展開すれば、Green Beansの良さを知ってもらうことができて、一度サービスを利用してもらえればリピーターを獲得できるのではないかと考えました。
人によっては置き配と非対面でのお渡しを同じように感じることもあるのではないかと思うのですが、非対面でのお渡しにこだわる意味は自社のクルーにどう伝えていますか?
確かに「玄関先に置く」という行動は同じかもしれませんが、受け取る側からしたら乱雑に置かれたものと、丁寧に置かれたものってぱっと見て分かるんですよね。お客さまはそういった商品の扱いにとても敏感なので、一つひとつの対応をどれだけ丁寧に心を込めてできるかという点にGreen Beansの価値や接客のレベルが現れるのだと思います。

これは非対面の配達だけに言えることではないと思うんです。例えば店頭で探している商品の場所を親身に教えてくれたら嬉しい気持ちになるし、逆に対面レジでお釣りを乱暴に渡されたら嫌な気持ちになりますよね。なので、対面・非対面問わず、お客さまにとって心地よい接客の在り方を常に考えています。
私たちの配達のこだわりがハッキリと伝わらなくてもいいんです。お客さまが受け取る瞬間まで、ストレスなく心地いい対応だと感じていただけるような接客を心がけたいですね。
Green Beansは今後対面でクルーを通して、「鮮度プラス」や「食べごろプラス」で提供している商品のおススメに注力すると伺いました。クルーからサービスをPRしてもらいたいと考えた背景を教えてください。
実はお客さまと双方向のコミュニケーションができるのは、Green Beansのサービスのなかでクルーだけなんですよね。この双方向の機会を逃すのはとてももったいないと思っていまして、クルーのみなさんに協力してもらい、対面でのPRを本格的に運用を開始することにしました。
お客さまがクルーと直接お話することによって得る生の声や情報は、チラシをポスティングするよりその商品が良いものであるという説得力があるのではないかと考えていますし、クルーのみなさんにも商品の良さを再認識してもらえる良い機会になるのではないかと期待しています。
クルー頼りにならない仕組みづくりに注力。理念を通した共通認識を持ちたい
配達時のこだわりや新たな取り組みを伺いましたが、イオンネクストデリバリーとして目指している配達のクオリティや、品質の水準維持に対して取り組んでいることはありますか?
まず、入社時の初任研修を全員にしっかり受けていただくということを徹底しています。これまでのキャリアや経歴がさまざまでも、しっかりと基礎のルールをキャッチアップできるように、研修の内容も日々アップデートしています。

初任研修を通して一定の水準で業務ができるようになったら配達を担当するのですが、日々の実務のなかでは毎朝の朝礼で接客場面を想定したロールプレイングを実施して、業務に慣れが起こらないようにクルー同士で確認し合っています。
また、お客さまからいただいた声、お褒めの内容や改善すべき内容も一人ひとりへ共有することで、接客レベルの維持や意識の共有を図っています。
他にも、各拠点にトレーナーという職位の社員を配置し、普段から同乗や指導でクルーの知識や技術を磨いていくような体制も整えています。また、トレーナーは業務改善の必要があるクルーにもきちんと向き合って「なぜ起こったのか、どうすれば良くなるのか」という再発防止策を一緒に考える役割を持っています。会社として組織体制でクルーが属人化しない風土になるよう、意識していますね。こういった取り組みでサービス品質の維持に取り組んでいます。

このような会社としての品質維持の取り組みは、クルーのみなさんに伝わっていると感じますか?
もし、会社がレベルの高い接客や安全運転をルールとしてクルーに押し付けると、ギャップや戸惑いを感じたり、順守する意味を見失ってしまうと思っています。
なので、「私たちは何のためにやるのか」というルールを守る基礎となる重要な部分をクルーのみなさんと一緒に考えたいと思っています。価値観の共有を通して原点に立ちかえるような、社員一人ひとりが自発的に行動できるような組織を目指したいと考えています。

具体的には今年から、これまでマネージャーまでに限定して実施していたイオンネクストデリバリーの理念教育を、よりクルーの実務に落とし込んだ内容に強化・再編して実施していく予定です。理念を徹底して読み解くことで、会社としてサービスに対する分かりやすい共通認識が生まれることを目標に、取り組みをスタートさせたいと考えています。
クルーのみなさんからは「前向きな挑戦は受け入れられる風土がある」というお話を伺うこともありました。組織の風土づくりにおいて意識されていることはありますか?
挑戦は改革は何かしらの業務を改善するためのアクションだと思うのですが、そのアクションが自分たちを楽にするためだけのものではなく、お客さまの買い物体験にとっていい改善であればどんどん進めて欲しいとお伝えしています。
例えばクルーの日常業務が効率化されることであっても、お客さまへお届けするサービスの品質がマイナスに変わってしまうのであれば、それは「前向きな挑戦」とは言えないと感じます。
サービスを提供するうえでは業務効率も重視すべきことですが、そのアクションによってお客さまにお届けする価値は最大化されているのか?ということについては、クルーのみなさんにも日頃から意識してほしいと思っていますね。
