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デジタルが支えるラストワンマイル。Green Beansが描くAIを活用したネット専用スーパーの未来とは

デジタルが支えるラストワンマイル。Green Beansが描くAIを活用したネット専用スーパーの未来とは
イオングループの新たなネット専用スーパーとして2023年7月にサービスを開始したGreen Beans。サービスの配達業務を担っているイオンネクストデリバリーは、最先端のAI技術を駆使して現代の新たな配達システムの創造へ挑戦しています。

挑戦を続ける理由は一体どこにあるのか。デジタル技術の活用・サービスの品質・組織についてという3つの観点から、経営企画部長のFさんにお話を伺います。今回はデジタル技術の活用について語っていただきました。

ネット専用スーパーとして、鮮度の高い商品をより多くのお客さまへ届けられる
ことが強み

イオンネクストデリバリーが配達を担うGreen Beansは、イオングループのなかでどのような特徴があるのでしょうか?

より多くのお客さまに、快適な購買体験を提供できるという特徴を持っています。

Green Beansはイオングループ初のネット専用スーパーで、小売の実店舗と連携しているイオンのネットスーパーとは違い、約35,000点の豊富な品揃えを誇っています。

これまでのネットスーパーは配達元の店舗規模の関係で品揃えに差がありましたが、私たちがサービスを開始したことで、Green Beansの配達地域であれば、どこにお住まいでも約35,000点という豊富な商品ラインナップから商品をお求めいただけるようになりました。

また、AIなどの最新技術を駆使してより新鮮な商品をお客さまへお届けできるという強みも持っています。AIやデジタルの活用は今までイオングループで取り組んでいなかった部分です。

ちなみに、お客さまが触れるECサイトの画面や商品の管理、商品を保管する大型倉庫の運営を担当しているのがイオンネクスト株式会社、その中でラストワンマイルの配送を担当しているのがイオンネクストデリバリー株式会社です。

なぜネット専用スーパー事業でAIを活用しようと考えられたのでしょうか?

日本は人口減少局面を迎え、少子高齢化が進むことで労働力減少が見込まれています。とはいえ、生活するお客さまが必ずしも同じように減るわけではない。そういった状況のなかで、どのように消費者の食のニーズに応えていくか。小売業者が考えるべきこの問題への回答として、AIやロボットを使ったネット専用スーパーであればお客さまのお困りごとは解消できるのではないかと考えました。

実現にはいろいろな選択肢がありましたが、私たちの技術力だけではなく英国のOcado社(オカド)とパートナーシップを締結することで、Ocado社が持っているAIやデジタルの知見とイオングループの小売のノウハウを活かしてイオンでネット専用スーパーを実現することにしました。

ラストワンマイルの配達業務においても、デジタル化を推進している理由を教えてください。

働く社員をサポートできると考えたからです。

AIやシステム技術を活用することは業務効率化に目線が行きがちですが、「デジタルが日々の業務を支援してくれる」とも捉えることができます。デジタルがサポートしてくれるからこそ、配送員が初心者であっても現場に出て配送業務をできるところに強みがあるんです。

具体的にはどのようなことをデジタルでサポートしているのでしょうか?

業務の効率化はもちろんですが、事例として挙げられるのは、配送ルートをAIが自動的に計算し、経験がなくても最適な順番で配送ができます。また、バーコードを使ってお客さまにお届けする商品を管理しており、ドライバー(私たちはクルーと呼んでいます)はモバイル端末で次に配送するお客さまの商品を簡単に確認することができるので、スムーズにお届けすることができます。そのため道に特別詳しくなくても配送ができるようになっています。あとは、マニュアルの電子化ですね。拠点に設置しているタブレットに最新のマニュアルを配信することで、人を介するよりもスピーディーに改訂内容が現場のクルーへ届くようになりました。

今のような組織拡大が早いスピードで進んでいるフェーズにおいては、デジタルの力でより前向きに仲間を増やすことができていますし、この先組織が成熟したとしても、デジタルが働く社員をサポートすることで負荷が減り、サービス品質に力を入れることが可能だと考えていますね。

注文から配達までワンストップで対応。内製がサービス全体の最適化へ繋がる

デジタル化を推進すると配達における非効率な部分が解消されると思いますが、競合他社と比べてどんな点で差別化できていると感じますか?

注文を受けるところから商品を配達完了までをひとつのプラットフォームで行うことで、全体の最適化が進み1時間単位の時間指定サービスを実現できていることです。

通常の物流であれば受注やEC運営を担う主体の企業があり、その先に配達会社が存在していて、受注と配達は別の会社が行うというのが一般的なシステムなんです。

そこを一貫したシステムで対応することにより、注文した時点でどのようにお届けするかまで考えて配達できるので、より非効率を解消してお客さまのためのサービスに注力できていると感じます。

〈Ocado Smart Platform:Ocado Solutionsホームページより〉

新たなデジタル技術を取り入れるときに、どのような基準で導入判断をされていますか?

私たちが所属しているイオングループは “お客さま第一” を掲げていますので、「お客さま目線で、その手段は本当に最適だと思えるか?」ということを常に考えています。

例えば、サービスを立ち上げるときに取り組んだ、CFC(Customer Fulfillment Center)という配送拠点を用いたコールドチェーン実現の事例が分かりやすいですね。

コールドチェーンとは産地から配送まで温度を一定に保つ仕組みのことで、鮮度の管理において重要な考え方です。今までのネットスーパーでは卸業者から店舗へ届ける工程や、お届けの際の積み下ろしなどで、せっかく一定の温度の状態で出荷してもお客さまにお届けするときには常温に戻ってしまうことがあります。ネットスーパーで鮮度がいい食材を提供するのは、ハードルが高いと考えられているんです。

しかし、私たちの場合は徹底的に鮮度や温度管理にこだわっていて、まず商品を積み込むCFCの温度を低く均一に保ったうえでそのまま格納し、低温をキープしたトラックでお客さまへお届けしています。

【コールドチェーンで実現した “鮮度+” のエビデンス】

〈Green Beansサービスページの動画より〉

お客さまにとって、買い物に出向く手間を省けるネットスーパーで、新鮮な食材が手に入れられたら嬉しいですよね。
徹底して顧客視点で、お客さま第一のビジネスを実現するというのはこういったことだと考えているので、今後どんなデジタル技術が生まれても、お客さま第一の考え方や判断軸は変わらないと思います。

なるほど。ちなみに、今後デジタルの力で解決したい社内の課題はありますか?

クルーが配達時に利用するデリバリーアプリの機能を拡充させたいですね。

当たり前ですが、通常のカーナビだと配達先までの道順までは教えてくれるけど、その建物への入り方や周辺の駐車情報は教えてくれないんです。でも、私たちにはこれまで配達した多くの情報があります。

今の集合住宅ってすごくセキュリティが高いんです。クルーが建物に近づいてからお客さまの玄関先に行くまで、かなり時間がかかってしまうことがあります。

入館手順も迷路のようで、「まずここで来館者に登録が必要で、そのあとあちらの出入口から入ってください」というように、建物ごとに異なるルールにクルーが右往左往している現状があります。そういった困りごとや非効率な部分を解消するための取り組みです。

自分たちで貯めた情報をアプリに入れることによって、違うクルーが配達に行ってもアプリを見ればどこに駐車ができて、どのように建物に入っていけばいいのか事前に分かるという仕組みを実現できるよう、テストを重ねています。

既に配送端末の中に”ドライバーズメモ”という次に配達しに行った人が特徴や留意点を見れる機能が備わっていますが、配達先でいつでも見れるようにアプリ化を進めたいと思っています。

物流の競合他社ですとエリアが決まっているので、ある程度人の力で解決しているのですが、イオンネクストデリバリーはエリア制ではなく広域を担当することもあり、仕組み化して、デジタルの力で解決しようと取り組んでいるところです。

ドライバーズメモとは別に管理職者が、クルーから聞いた内容を拠点で集約し、引き継いでいるんですよね。社員数も増えているので、どのクルーも簡単に情報を手に取れるよう、早急にアプリ化及びデジタル化したい部分です。

2025年現在は建物の写真と併せて、細かく共有事項を各配送センターごとに記録し配達業務に活かしています。

買い物の心地よさを追求することで、お客さまの毎日を楽しいものにしていきたい

イオンネクストデリバリーとして、デジタルで実現したいことがあれば教えてください。

私たちが何をしたいかの根底には「毎日を楽しいものに変えていきたい」という想いがあり、その想いを乗せてGreen Beansは「買い物を変える、毎日を変える」という理念で事業を展開しています。

買い物は時間が取られる、かつ毎日しなければいけないという意味で、生きていく上でのタスクになっているところがあると思います。ですが、Green Beansを使うことによって、タスクのように感じていた毎日の買い物が楽しいものに変わって欲しいと考えています。

今まで買い物にかかっていた時間をスキップして、携帯で隙間時間に商品を選び、しかも自分が指定した1時間内に届けてくれるとかなり時間をセーブできるし、買い物の時間を、本来自分が使いたいことに充てられる。お客さまからすると、これは魅力的なことだと思うんですよね。

デジタル化で新しい時間を生み出すことができたら、皆さんの生活までも楽しいものになると思っています。その想いを実現するために、ロボットやAIデジタルという手段をビジネスのなかで最大限活用していく予定です。

Green Beansのデジタル活用への想いがよく分かりました。本日はありがとうございました。